随に

まにまに

一度目の不妊治療

よく晴れた冬休み。

特に予定もなかったので、近所を散歩しようということになった。

東京から引越してきて数か月。

生活にも慣れて余裕が少しみえてきたなあと思い、

何とはなしに「不妊治療、また始めてみようかな」という言葉が口に出た。

 

前年の夏、一年以上続く断続的な左下腹部痛への不安が頂点に達して、会社を早退して婦人科にかかった。

問診票の治療を希望する欄にあった「不妊」に、少しのためらいを覚えつつ丸をした。

そこから1回目の「不妊治療」がスタートしたのだが、これは1か月と少しで挫折した。

内診、複数回の採血。会社を遅刻・早退して、気温が上がり日差しがきつくなる中、駅からの道のりをしんどい顔をして数十分も歩いていたのだと思う。

診察は流れ作業のようで、何の検査をしているのか、結果はどうだったのか、さらっと流れるように説明されて、気後れしてしまい、なかなか質問もできなかった。

約一か月後には、「多嚢胞性卵巣症候群」と診断され、排卵誘発剤クロミッドの処方。

プラノバールというホルモンバランスを整える薬の処方。

出された薬を飲みきったら2,3日で生理が来るので、生理後5日以内にまた来るように言われたが、もう行くことはできなかった。

プラノバールの副作用による吐き気と、医師との折り合いがよくないためか、治療の先が見えず、精神的な負荷が増え、朦朧としていた。

最後の診察を受けた後の帰り、もうあの病院には行きたくない、と電車の中で泣いた。

それほど、追い詰められていた。

 

その日から約半年かかった。

通勤時間も1/3以下になり、自然の多い土地で暮らすようになった。

多数の他人と電車に揺られる時間が無くなり、歩く時間が増えた。

帰宅後の時間に余裕ができ、夕飯の献立も一品増えた。

都内に住んでいた頃は新婚生活なのに(だから?)、ギスギスしていっぱいいっぱいで疲れていて情緒不安定だった。

それを時間をかけて新しい土地で溶かしていった。

年が改まり、ふっと気持ちがほどけて、肩の力を抜いて、不妊治療してみようかという気になれた。

 

そこからのことを、現在進行形で綴っていきます。